札幌ラーメンの歴史 その4・最終回

「さっぽろラーメン」の危機

日刊スポーツ 

 「さっぽろラーメン」がブームになればなるほど、客を失望させるラーメンを提供する店も更に増え、「味の会」を設立してもなかなか歯止めがかからなかった。そこで1987年(昭和62年)、北海道新聞で「さっぽろラーメン」についての討論が3回の連載で掲載され、同10月29日 朝日新聞夕刊で「札幌ラーメンが危うい」という記事が掲載された。ラーメンファンの関心は集まり、同11月2日 日刊スポーツ北海道本社版では「頑張れさっぽろラーメン」の企画でなんと50回の連載企画が組まれた。日付は明らかではないが、読売新聞北海道版でも連載が始まり、札幌の社会問題に発展しつつあった。

 

さっぽろラーメンのこれから

 「さっぽろのみそ」。これを楽しみにして来る観光客は多く、それをけん引する施設として「元祖ラーメン横丁」と「札幌ラーメン共和国」二つの大型施設がある。2004年(平成16年)オープンの「札幌ラーメン共和国」は、道内有数のラーメン店を一同に集結させることで道内外からの集客を図れる札幌経済にかかせない存在だ。

新しいラーメン横丁

ラーメン共和国 オープン 

 「札幌味噌ラーメン」の特徴は、一言でいえば、ボリュームの多い、熱くて濃厚なラーメン。中華鍋でタマネギ、ひき肉、もやしをラードで炒めて、味噌ダレを入れて鍋で煽(あお)り、最後にスープを入れて馴染ませる。麺は中太縮れ麺というのが定番。特徴はなんといっても中華鍋を使って具材とタレを「煽る」こと。煽ることによって野菜はシャキッと、タレは香ばしく仕上がる。だが煽ることが一番難しく、鍋の使い方ひとつで味が変わってしまう。ゆえにゆるぎない鍛錬が必要だ。

 近年はご当地ラーメンから抜け出し、嗜好の変化に合わせて魅力ある商品を提供する店舗が増えている。この傾向はラーメンの味にブレを出さないなど、職人としての技術は必要だが、技術を提供するだけではなく、客と向き合い、調理工程や接客や会話も含めたすべてがラーメンの味になるという概念が主流になっている、ということではないだろうか。昭和、平成の逞しい時代を経たからこそ見えた、店と客が共に昇華できる豊かな関係性をこれからは築いていくのだろう。〈終〉

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